ファミリーメイク 家族の絆は猫のひげ

    

       

 僕に子供はいない。妻と猫が、家族のすべてだ。恋愛を普通に五年ほど経験して、僕が二十五才で彼女が二十七才のとき二人は結婚した。十五年の間に引っ越しを三回と転職を五度、車とコンピューターを何回か買い替え、猫は一匹が十匹に。

       

 彼女はとても猫好きで、結婚してすぐに茶トラの子猫『チャロ』が僕たちの初めての家族に加わった。彼女に『チャロ』をプレゼントしたのは僕の母。母は半月後にもシャムの子猫『ニャン太郎』を嫁と姑の友好の証として彼女に贈った。それからも子猫を公園やごみ捨て場から拾ってきたりで、とうとう家族はふたりと十匹に。今ではちょっとした猫屋敷だ。そのようにして家族はずいぶん増えたけれど僕の家族には親子、兄弟とかの血の繋がりといったものがまったくない。でも一応、家族は家族である。

           

「お子さんは」とよく聞かれる。その場合パターンは三つ。

「なかなか恵まれなくて」「若いんだから、これからまだまだできますよ」もう若くはないんだよな、嫁さんは年上だし、それに欲しくもないし。

「いないんですよ」「それはお気軽でいいですね。子供ってたいへんだから」まあ、そりゃそうでしょうけど。

「子供は嫌いなんです」「そんなことないって。自分の子は特別なんだから」このパターンが一番厄介だ。たいてい後はこうなる。「子どものために自分の人生犠牲にしたくないんだよね」「今はいいけどさ、年とったら寂しいよ」「こんな時代に子ども育てる自信がないしさぁ」「どんな時代でも子どもは育つって」「でもね」「だからさ」 ・・・ 。

        

 でも、時々こんなふうに思ったりすることもある。どこかの国の昔話みたいに、ある日ひょっこり赤ちゃんを拾って子猫たちのように家族の仲間入りする。

そして、物語は始まりいつしかハッピーエンド。めでたし、めでたし。

でも、彼女の物語は違うらしい   

 「そのうち子どももデパートで買えるようになるかもよ」と彼女。やれやれ。

         

(敬)

      

  98年9月 

          

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