朝明の駐車場に着くと8:00を過ぎていたが、祭日だというのに車は1台も無し。駐車料金徴収係りのおじさんも今日はお休みみたいだ。天気も良くて気温も高め、上着はザックにしまって出発。駐車場脇の登山口から尾根を一つ乗越し庵座谷に。キャンプ場から堰堤を抜け、沢沿いの山道から庵座大滝へ。夏なら沢通しに行くの所だが、今日は雪溶け水が冷たそう。落差40mを誇り南に面した大滝は明るくて見栄えがいい。滝の下部には虹も架かってとてもきれいだ。南コブからハライドへ縦走中、落葉の樹間から小さく糸をひく庵座大滝を見つけた時はすごく感激したことを憶えている。登山道に引返し滝の上部に巻き返したあたりからようやく積雪状態に。昨日のものか誰かのトレースがついている。庵座大滝から30分ほどで10m二段の滝に出た。崩壊で花崗岩の岩屑に埋め尽くされた急な左のルンゼを巻く。期待したほどではないが、日陰のせいか雪はそれなりに詰まっている。やっとピッケルが使える。このルンゼと松尾尾根直下の急斜面だけに備えてピッケルを持ってきたんだから。落石でねじ曲がったパイプダムを越え、しばらく沢つたいに進む。日当たりのいい所は雪がシャーベット状で、残雪期の春山みたいだ。沢道から分かれ松尾尾根の頭から南に落ちる尾根に取りつく。潅木に掴まりながらの急斜面だ。雪は少ないが踏跡の圧せつされた雪が部分的に凍っていて滑りやすい。転落しそうで緊張する。取りつく前にアイゼンを着けておけばよかった。左手で木の根を掴み、右手のピッケルをアイスハンマー代わりにしてよじ登る。こういう時は短かめのピッケルは使い勝手がいい。いったん稜線に出ると目の前に大陰のガレが大迫力で迫ってきた。さらに木登りを続けると再び視界が開け松尾尾根の頭に。少し霞んでいるが南に展望が開けている。北側は木の枝が張出していて見通しはよくない。
11:15、釈迦ガ岳山頂。伊勢湾も名古屋市街も完全に霞んでいるが、御岳や北アルプスの白い峰が遥か遠くに、ぼんやり雲のように浮かんでいる。まるで初春のような不透明な空気だ。風もなく長閑な陽気で冬の山にいるとは思えない。シャーベット割りのウイスキーを飲み、ラーメンを食べて食後のコーヒーを味わいゆっくり休憩。山頂でこんなにのんびりするのは本当に久しぶりだ。下山は羽鳥峰から。猫岳の北斜面はさすがに雪がしっかりついている。ここからの釈迦のアルペン的な眺望は格別だ。1週間前なら大陰ガレも真っ白だったろうに少し残念。猫岳の南斜面もイネツゲ?が群生していて、本当は樹氷がきれいなはずだが今日はぜんぜん。猫岳の鞍部に下りたところで、2匹の柴犬を連れたソロの男性とすれ違った。今日の山行きで出合った唯一の人と動物だ。羽鳥峰に雪はまったく無くすぐピークから引返し、まだ一度も歩いたことのない猫谷の林道に下る。県境縦走路の分岐には「林道急」の小さな木札がかかっていたが3、4分も下ると平坦な林道に出た。遠回りだが緩やかで、膝に負担がかからず楽な道だ。抹茶色した小さな鳥の群れが木立を行き交っていたが鳥の名前は分らない。14:16、朝明駐車場帰着。冬山の期待は裏切られたが、のんびり静かな山行きができてそれなりに満足。庵座の滝上部から松尾尾根の頭にいたるルートは、鈴鹿の一般登山道としては最難関のルートに入るのだろうが、緊張した山登りが楽しめてとてもよかった。ちょっと恐いけど、いつか雪の大陰ガレ源頭リッジをトラバースしてみたい。
