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 2002年9月1日〜9月3日   西穂高岳〜奥穂高岳〜槍ヶ岳 縦走

 

 

 9月1日    新穂高温泉〜西穂高口〜西穂山荘

   

   

 9月2日    西穂山荘〜西穂高岳〜奥穂高岳〜北穂高岳〜北穂高小屋

     

   

  3:57     西穂山荘

  4:47     独標

  5:14     ピラミッドピーク

  5:48     西穂高岳

   〜6:02   

  7:10     間ノ岳

  8:00     逆層スラブ

  8:20     天狗岳

   〜8:35

 10:20     ジャンダルム

   〜10:45  

 11:50     奥穂高岳

   〜11:55

 12:18     穂高岳山荘

   〜12:58

 13:18     涸沢岳

 15:20     北穂高岳

   〜15:30

 15:31     北穂高小屋            写真  ジャンダルムを奥穂から望む

   

  

西穂高岳

   

        

 二十四夜満天の星の下3:57、西穂山荘を出発。ヘッドランプの灯りを頼りに、まずは西穂高岳を目指す。西穂から奥穂への縦走は、7月の敗退で夢から呪縛に変わってしまった。すでに先行したパーティーの小さな灯りが3つ4つ暗闇の中で揺れている。たぶん彼等も縦走組だろう。西穂から奥穂への縦走は全く時間が読めない。縦走を目指すなら4時には出発するのが鉄則だ。昨日、奥穂から縦走してきたパーティーが西穂山荘にたどり着いたのは午後7時を過ぎていた。登山口から独標は夜道とはいえ時間を稼げる区間だ。機動性を最優先としパッキングも10キロ以下だ。丸山で先行パーティーに追いついた。50代のオヤジ達だ。「おはようございます」。「速いね。はじめチョロチョロ、なかパッパッ・・・・」オヤジ流の挨拶か。思わず笑顔を返してしまった。これでもう僕の前に誰もいない。振返ると遠く小さく高山の街の灯が淡い宝石屑のようにひっそりと光っている。独標に着く頃には星がほとんど消え、山並が灰色のシルエットととなって姿を現しはじめた。最初の難関、独標から稜線への降下をクリアしピラミッドピークに。5:48、西穂高岳。7月には悪天で、ここから引返した。眼前には目覚めたばかりの穂高の峰々が急峻なピークを連ねその遥か先に槍の穂が煌めいている。必ずあそこまで行ってやる。

             

奥穂高岳

    

 ここから先は未知の領域だ。北アルプスの縦走路の中でも西穂、奥穂間の縦走は最難関といわれ奥穂から西穂に下るのが一般的らしい。その理由は、その方が難所が登りとなり多少なりとも危険度が低くなるからだ。でも僕は西穂か奥穂を目指す。理由は生涯一度切りになるであろう最難関の縦走を登山本来の「高みをめざして登る」というストイックなスタイルにこだわりたかったからだ。西穂山頂から急降下し一つ目のピーク赤岩岳に急登、西穂を振返る。朝の赤い陽光をいっぱいに受けた西穂の東面と陰になって真っ暗な稜線の西側との光と陰のコントラストが鮮やかだ。再び深いコルに降り這うようにして間ノ岳のピークにつめる。間ノ岳の北稜は礫岩が不安定に幾重にも重なる急斜面で、今にも岩雪崩が起きそうなくらいに危うい。浮石にのろうものなら足場ごと奈落に崩れ落ちていきそうだ。慎重にガラ場の底に降り、さらに切立ったリッジのアップダウンとトラバースを極度な高度感にさらされながら2つ3つこなし垂直に近い壁をクライムダウンしてようやく間天のコルに。ここで一息。

     

 間天のコルから飛騨側の壁をトラバースぎみにピークを乗越し、逆層スラブ岩壁に取りつく。長い鎖を頼りに大きなスレート瓦を重ねたような岩壁を50mほど這い上がり、さらに登りつめて天狗の頭に。ピークには「天狗岳」標識が。若者が二人弁当を食べていた、西穂に向かうという。僕もおにぎりを1コ食べてお互い写真を撮りあう。行手にはコブの頭、ジャンダルム、奥穂の黒く鋭い岩峰が無気味にピークを連ねている。まだ半分、先は長い。眼下の上高地がまるで別世界の地のように目に映る。2年前、あの場所からこの稜線を初めて眺めた時、何を思っていたのだろうか。突然、爆音をたてながらヘリが北から飛来し飛騨側を低空で西穂方面に飛び去っていった。白にブルーのツートン、北飛山岳救助隊のヘリだ。後続のオヤジ達のことを思い出した。

      

 天狗のコルに急降下し、天狗沢の分岐に。ここにはかつて避難小屋があったらしいが、今は跡形もない。コブの頭を飛騨側からトラバースしてジャンダルムの取りつきに。このままジャンをパスして奥穂に向かうこともできるが、やっぱりジャンははずせない。鎖をつかんで取りつきの壁を這い上がり急崖を慎重に5分ほどつめてジャンのてっぺんに。奥穂の山頂が目の前だ。槍に続く山嶺も一望に見渡せる。ジャンダルムは立派な3000m峰なのに何で山名が無いのだろう。取りつきまで降り、ジャンダルムを信州側に巻きさらに飛騨側にクライムダウン。ロバの耳下部のバンドを40mほどトラバースしてから10mほどの垂直の壁をつめ上がり再び稜線に。ロバの耳を過ぎると礫岩を重ねた丸い大きなピークが現われた。ジャンのてっぺんから奥穂はすぐそこに見えたが奥穂まだもう少し先みたいだ。ピークを下り馬の背に。見事なナイフリッジの岩のキレットが急傾斜で20mほどせり上がっている。両側が切れ落ちて高度感は凄いが、取りついてみるとカドがしっかりしていて難所というほどのものではなかった。11:50、奥穂高岳山頂。何故か縦走したんだという達成感も喜びも湧いてこない。ただ、もうこれで恐い岩場の登り下りは終わり、ホッとした、とい気持ちで心の中がいっぱいになってしまった。祠に手を合わせ一気に穂高岳山荘に下る。山荘前のテラスからの涸沢カールの景色に癒される。とにかくビール、生ビールが飲みたい。が、山荘の売店には缶ビールしかなかった。ロング缶を一気飲み、うまい。靴を脱いだら、ジュワーッとここちいいしびれが走り抜けていった。人心地ついたところでお昼ご飯。西穂山荘のおにぎり弁当だ。ビールを飲んでご飯を食べたら気力も回復。よーっし、今日は北穂まで行くぞ。

     

           

      

          

北穂高岳

         

 穂高岳山荘から殺風景なジグザグ道を20分ほどつめ涸沢岳山頂に。涸沢岳を下るとルートはハシゴと鎖のベタ張りに変わった。切立った岩崖のトラバースと信州側、飛騨側の乗越しを何度も繰り返しながら北穂を目指す。特に飛騨側は滝谷の源頭にあたり稜線は足下からすっぱり切れ落ち鎖があっても下を見ると思わず足がすくんでしまう。滝谷ドームはどの岩峰だったのか気づかないうちに通り過ぎてしまった。北穂方面からのパーティと何組かすれ違ったが奥穂から北穂に向かっているのは僕の前後には誰も見当たらない。2時過ぎ気がつくとあれほどの晴天だったのに槍ヶ岳がガスで霞みはじめていた。ガスは飛騨側を北から覆いはじめだんだん北穂に迫っている。ガスに巻かれると厄介だ、ピッチを上げる。南峰を過ぎ鎖の連続にうんざりしかけた頃、ようやく北穂高岳に到着。空身の人達ばかりたくさんいるなと思ったら山頂のすぐ近くに北穂高小屋があった。15:20、今日はここで行動打切り。槍ヶ岳に連なる稜線を飛騨側から溢れ出したガスがゆっくり信州側に乗越してゆく。笠が岳の山頂部分に薄い笠雲がかかり左右シンメトリックな山容と相まっていい構図だ。常念岳から蝶ガ岳の稜線を正面に望む小屋のテラスで生ビール。宿泊の手続きを済ませ部屋に案内してもらう。二段ベットの上のスペースを割り当てられる。時間があるので槍への縦走路の下見に出かけたが、取りつきからからいきなり急崖の降下でとてもデコ電だけでは降りられそうにない。明日も暗いうちから早出のつもりだったが、5時出発というところか。陽が落ち出すと蝶ガ岳の東の稜線上空に黒いの山嶺の影が現われた。ブロッケン現象だ。蝶ガ岳上空の薄い雲のスクリーンに夕陽に投射された北穂と南峰の影が映し出されている。初めて見た。一眼レフを構えた何人もの人がしきりにシャッターを切っている。夕食は豚の一枚肉のしょうが焼き、結構美味しかった。朝とお昼の弁当を受取り8時過ぎにふとんにもぐり込む。今日は疲れた。

北穂高岳 〜 槍ヶ岳 

           

      

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