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 2003年2月1日      乗鞍岳 3026m 到達点 2770m  晴れ

       

 乗鞍高原温泉スキー場〜位ケ原〜肩の口〜乗鞍岳肩の小屋   往復           

    

           

  9:50     乗鞍高原温泉スキー場第3リフト   

  時間不明     位ケ原

  時間不明     肩の口

 12:35 〜   乗鞍岳肩の小屋

   13:30

  時間不明     位ケ原

  時間不明     肩の口

 15:35     乗鞍高原温泉スキー場第3リフト

     

       

       

      

       

          

       

 「登山用GISの実用性の検証」乗鞍実証登山?

       

 GISとは衛星の信号を利用した地理情報システムのことで端末はGPSと呼ばれている。登山用のGPSではGARMIN社のe-trexなどが一般に汎用されていて現在地の確認やルートの記録などに使われている。今回、某新聞社が中心になって開発中の登山用GISソフトと端末の冬山実証実験に無理矢理参加させてもらうことにした。プロジェクト名は「登山用GISの実用性の検証 乗鞍実証登山」、父を元旦に亡くしまだ四十九日もすましていない身で山に行くには仕事にかこつけるしか仕方ない。出発前々日、新聞社に出向き開発責任者で隊長のO部長にルート、装備、メンバーを確認する。乗鞍高原温泉スキー場からスキーで肩の小屋を目指し、あわよくば乗鞍山頂をうかがい滑降下山するということだったが、僕自身はスキーで登るのも滑降下山も初めての経験だ。クライマーM氏にピックアップしてもらい、1日零時15分、乗鞍観光センターに到着。集合した登山隊メンバーは12名。新聞社関係、同好会、岳人編集部員、ソフト開発担当者らの混成部隊だ。登山隊とは別にGIS委員会のメンバーが白骨温泉で待機することになっている。ビールを飲んで仮眠、乗鞍観光センターの仮眠室は無料の上、暖房付で畳敷き山小屋より快適だった。

   

  凍死寸前?本隊はまだか肩の小屋

     

 快晴、のんびり朝食をすませバスでスキー場に。新品のスキーを履いて第1リフトまで下るがいきなり転倒。隊長「ひょっとしてスキーの経験は・・・」僕「初心者です」隊長「無暴なことを」僕「まぁ、何とかなるでしょ」。リフトを乗継ぎ、第3リフト1990m地点に到着。肩の小屋は乗鞍山塊の摩利支天岳と朝日岳の鞍部に位置し、最終リフトからは位ケ原、肩の口を経由し通常3時間ほどの距離にある。各自スキーにシールを装着し出発準備を完了するが僕だけ手間取る。シールの保護フィルムが強力に粘着していてなかなか剥がれない。二人がかりで引っ張っても剥がれない、完全な不良品だ。しかたなく本隊に先行してもらう。歯でフィルムをかじりとり、ようやくシールを装着して10分遅れで本隊を追う。初めてのスキー登山で多少不安だったが、思いのほかシールが効いて軽快に斜面を登高する。2150mあたりで本隊を追い抜く。3カ月ぶりの山登りの割には快調なペースだ。2400mあたりで針葉樹林が尽き位ケ原にさしかかる。10分程待機して本隊を待つがなかなか姿が見えない、単独で肩の小屋を目指すことにする。やや南西よりにルートをとりカールの基底部に出ると、一気に強風がたたきつけてきた。地吹雪の波が雪面をなめるように打ちおろしてくる。一面銀世界。見上げる白銀の彼方に広がる紺碧の空と摩利支天岳、朝日岳、剣が峰から裾野を広げるカールの白さとの原色のコントラストが凄く美しい。なのに風は強く冷たい。雪面はかたく凍てつき、シールの効きがだんだん悪くなってくる。肩の口で小休止、どら焼きを食べる。ここから肩の小屋までの標高差わずか150mに苦戦する。クラストした雪面にスキーが滑り、しばしばずり戻されてなかなか高度がかせげない。スキーアイゼンを置いてきたことを後悔する。ここまできたらスキーを履いたまま肩の小屋まで登りたい。冷たい風はさらに強まりストックを握りしめる指先が痛みだす、顔はほとんど伏せたままだ。小屋を目の前にしてからが、とても遠い。息が上がり、10数メートル登っては立ち止り息を整える。小屋は目の前だ、あと少しでこの苦しさから解放される。

 12:40、肩の小屋2770mに到着、だが小屋の1階は半分雪に埋もれ風を避けれそうな場所が見あたらない。すぐとなりの宇宙線研究所の軒下に入り込みスキーを脱ぎ、ザックを下ろしその上に腰掛けほっと一息。やれやれ、予想よりかなり早い到着だったが詰めが結構苦しかった。このまま本隊が到着するまでここで待機することにする。気温マイナス18度、風は避けれてもかなり寒い。アイゼンとピッケルを持ってくれば、少しは頂上に取りつけたのにと後悔する。13:00を過ぎても本隊は現われない、体が凍てついて足の先がしびれてくる。ツエルトまで置いてきたのは失敗だった。内心、肩の小屋までならスノーハイク程度だと甘く考えていたのが間違いだった。寒い、ツエルトが欲しい、本隊はまだか。そのころ本隊は・・・・・・。

     

   

           

 滑降失敗 スキーかついで単独ラッセル下山

        

 そのころ本隊は、すでに滑降下山の最中だった。樹林帯を抜け位ケ原にさしかかった本隊は目前の処女パウダーの小ピークに魅せられ、目標地点をP2435mに変更してしまっていたのだ。携帯電話で僕との連絡を試みたもののつながらず、白骨温泉のGIS委員会のメンバーに「1名不明、たぶん肩の小屋に向かった模様」の報告を入れ、行動停止予定時間の13:00には全員下山しはじめていた。

 13:30、本隊は途中で引き返したと判断、下山することにする。じっとしたまま、もうこれ以上寒さに耐えられない。スキーを履いて滑降開始。乗鞍大滑降のはずだったが・・・・、ガチガチに凍りついた雪面を強い風を背中に受けて、予想外のスピードでスキーが滑りはじめる。すぐにコントロール不能となりヤバイ、コワイと思った瞬間、波形状にクラストした雪面にはじかれ転倒、10mほど滑り落ちて止まった。立ち上がろうとすると左膝にズキッと痛みが。スキーは諦め歩いて下山することにする。ザックにスキー板をくくりつけ、おそるおそる2、3歩、歩いてみる。痛みはあるが何とか歩けそうだ、下手なスキーより歩いた方が早そうだ。肩の口までクラストした雪面を慎重に下る。あいかわらず強風だが背中からだと全然気にならない。それにしてもなんていい天気なんだ。位ケ原に下ると雪面がだんだん柔らかくなり膝あたりまで沈みだす。樹林帯に入ると風は止んだが腿あたりまで埋まってしまい、重い雪に難渋する。沈んだ足を引き抜き一歩前に進めるのに労力がかかる。左膝が痛みだす。雪山の下山は転がりながら飛ぶように下るものだと思っていたが勝手がちがう。突然体が腰までズッポリ吸い込まれる。大きな木のまわりは雪の密度が薄くうっかりハマってしまったみたいだ。這い上がろうと足を動かすと足が空回りして胸まで沈み込み、身動きできなくなってしまった。何とか雪の中の木の枝をたぐりよせがら這い出し、雪面に体重がかからないよう腹ばいになって木から離れる。深く重い雪に散々苦しめられながら、15:35、やっとのことで第3リフトに到着。下りでこんな苦しい思いをしたのは初めてだ、もう膝が痛くて歩けない。リフト係りのおじさんに頼んでリフトで下らさせてもらう。リフトを降りるとおじさんが連絡してくれたみたいで、スキー場のパトロールの人がすぐにやってきて簡易ギブスと三角巾で膝を固定してくれた。応急手当をしてくれた上、スノーモービルでスキー場の一番下まで送ってもらい、ようやく観光センターで待機していた本隊と合流。親切なリフトのおじさんとパトロールのお兄さんに感謝、ありがとう。本隊と合流後、白骨温泉へ。GISの評価会の後、みんなで混浴宴会。痛めた膝に濁り湯が気持ちよくしみてくる。雪におおわれた露天風呂から満天の星空を見上げ、今日一日を振返る。反省の多い山行きだった、山をなめたら酷い目に遭う、でも止められない。まぁ、無事でよかった、次は必ず剣が峰まで行くことにしよう。

      

「登山用GISの実用性の検証」の詳細については岳人3月号を参照してください。

     

   

写真  上 下  肩の口からコルを振返る   中  剣が峰、朝日岳

       

  

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