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  2004年3月15日     西穂高岳 2909m

    

 

 西穂口 〜 西穂高岳山荘 〜 西穂高岳  往復 

   

  9:15 西穂口 10:10 西穂山荘 12:35 ピラミッドピーク

 13:25〜14:05 西穂高岳 15:25 西穂山荘 16:05 西穂口

                

                        

         

 今日、僕は西穂高の山頂に立つことができるだろうか。3年前の2月、冷たい強風の中、確かに僕は西穂高の白い頂きに立った。それは強靱なガイドにザイルで引っ張られてのことだったが、登頂の達成感は言葉に言い尽くせないものがあった。時間が経ち、ザイルに引っ張られて登った事実だけが記憶に残り、あの達成感は靄のように薄く滲んでしまった。

         

 ロープウェイ始発に乗り、西穂口駅に。登山者は僕の他は2人、一人はピラミッドピーク、もう一人は丸山までのスノーハイクだとか。ピラミッドピークまで・・・か。内心は西穂山頂までと思っていても、一人で西穂高岳を目指すのは不安だ。最低でも独標は越えてピラミッドピークまでは、というのは自分の気持ちに折合いをつけるのに都合がいい。千石庭園から樹林帯のなだらかな雪のトレールをしばらく進むと左に視界が開け西穂高岳が姿をあらわす。薄い雲が西穂の山頂をかすめているが、天気は晴れ模様だ。西穂山荘の前でアイゼンを装着。以外にも、ここからトレースは消え、固く凍てついた雪面にかすかにアイゼンの爪あとが残っているだけだ。予想通り稜線にでると風が一気に強くなった。クラストした雪面にアイゼンの爪がよく効きく。真っ白な笠ガ岳が美しい。焼岳の近くの灰色の雲がこちらに流れてくるのが気にかかる。丸山あたりで天気は急変、雪が飛騨側から吹つけ目の前の独標とピラミッドピークがみるみる視界から消えていく。あの雲に追いつかれた、だとしたらこの吹雪も一時的なものだろう。最初の雪壁をつめ独標に、ガスで吊り尾根の景観は楽しめない。ピラミッドピークに続く稜線に降りる。両側が切れ落ちたキレット状の嫌な場所だが、ピッケルと前爪の効きを楽しめるポイントでもある。小ピークを飛騨側から巻ながらピラミッドピークを越えると、また青空が広がりはじめた。頂上直下のクラストした雪壁をピッケルと前爪でよじ登る。ここで滑落すると止まらないだろう。

 西穂高岳の山頂に立つと先客が一人いた。今日は頂上独占のつもりだったが、この方は写真を撮るために2時間も前から山頂にいると言い、僕に頂上を譲って下山していった。それにしても何とすごい展望なのか、かすかに槍の穂先が見える、雪の西穂高岳に一人で来たのだ。これでザイルの呪縛から解放されたと思うはな、1年半前、ここから槍ガ岳を目指した時の高揚感が蘇ってきた。そうだ、もうひとピーク、赤岩岳まで行ってみるか、そう思い山頂の端に立ったとたん気力が萎えた。とてもここは降りられない。信州側に鋭く切れ落ちる雪壁をトラバースしなければ赤岩岳のコルに下れないし、ここをまた登り返すのは恐ろしく勇気がいる。まぁ、のんびりして戻ることにしよう。昼食代わりのどら焼きを食べ、コンソメスープをすする。至福のひと時。事故は帰路に起きる、気を引き締めて下山しよう。登路ガスに覆われていたピラミッドピークから上高地を見下ろす。去年風雨の中縦走した前穂から奥穂の吊り尾根を眼でなぞる。そういえば丸山まで一緒に登った花屋さんはどうしているだろう。独標を後にしてからは高速モードで駆けおり西穂山荘前でアイゼンをはずす。西穂山荘から下りはグリセードと尻セードを楽しみつつ西穂口へ。最終のロープウェイを待つ間に生ビールで喉を潤す。ロープウェイ駅の展望台から西穂山荘から西穂高岳に連なる峰々を一望し、今日一日の感慨に浸った。もうつまらない、こだわりで山に登ることはやめにしよう。

     

   

      

        

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