
台風の後の晴天を狙い後立山へ。終止、剱岳、立山のスカイラインを目の高さで追いながらの唐松岳から爺ガ岳への縦走は、久々快心の山行きとなった。
8月3日、快晴、ゴンドラ八方駅からリフトを乗継ぎ八方池山荘へ。八方尾根から唐松岳を目指す。右に不帰ノ険、左に五竜岳を眺めながらの尾根道は快適だ。唐松山頂小屋のあるコルに登りつめると美しく険しい剱岳が出迎えてくれた。昨年7月、初めての剱岳は、ガスに包まれていて、その秀麗な山容を眺めることはできなかった。頂上小屋から右に転じ12、3分で唐松岳に。快晴に恵まれ、山頂からは、遠く妙高から日本海、白馬、剱立山連峰ときれいな景色が広がっている。すぐ北の不ノ帰険に誘われ、ふと白馬に行こうかとの思いがよぎったが、頂上小屋に引返し五竜に向う。小屋で缶ビールを飲む、今日初めての水分補給、うまい。牛首のナイフリッジを鎖つたいにい下り、大黒岳を黒部側に巻く。白岳のピークを越へ遠見尾根の分岐を過ぎ、五竜山荘に。ビールを買いに山荘に入ると受付に「本日一畳に2、3人」との札が掛かっていた。五竜山荘泊の予定だったが、八峰キレット小屋まで足を延ばすことにする、明るいうちにはたどりつけるだろう。45分ほどで五竜岳に。おにぎりを一つ食べ八峰キレットへ。五竜岳までの盛況に比べ、キレットに向かう登山者は少ない、視界に捉えられる先行者は一人だけだ。五竜岳からG4のコルへの下りはガレ場で落石に気を使う。G5の手前で先行の単独男性を追い抜く。一言、二言言葉を交わす。G5は難所だが、鎖がベタベタに設置されていたお陰で、心臓がキュッとなることもなく無事通過。岩場のアップダウンを繰返し口の沢に。ここで核心部も終わり。北尾根の頭から振返る五竜岳は、北面の優しい山容と比べると、かなりアルペン的だ。いいかげん岩峰の乗越しやトラバースにうんざりしかけた頃、キレット小屋到着。玄関口でいきなりおばさんに、「人が落ちたの見た?」と聞かれる。午前中、G5あたりで男性が転落してヘリで回収されたらしい。3年前冬の西穂、一昨年西穂奥穂縦走、去年の剱岳、北アルプスに入ると僕のトレース前後でよく人が落ちる。夕食まで時間があるので、小屋の前のベンチで剱岳を眺めながらビール。後続の男性も無事到着し二人で祝杯。今日は天狗平山荘からだという、44歳、僕とは一つ違い、山歴も同じようなもので意気投合。彼は、今日一日で不帰ノ険と八峰キレットを越えてきたことになる、すごい。夕食はハンバーグ、おいしい。キレット小屋は収容人数50人と小さな小屋だが、トイレも清潔だし食事もよくて、とてもいい山小屋だ。ただこの日は、胸や帽子に旅行社のワッペンをしたおばさん達20人ほどの団体さんと一緒になってしまい静かな山小屋の夜とはいかなかった。この団体さんを引率するのは、ちょっと山をかじっつた程度の派遣添乗員、お客の半数はキャラバンシューズ、明日、八峰キレット越えだという。一日違っていたら、この人たちに岩稜ルートを塞がれてストレス登山になるところだった。しかし、こういう人たちのお陰で山小屋の経営も成り立っているのだろう。寝てる人に構わずしゃべくりまくるおばさん達に閉口しつつ耳栓をして寝る。明日は5時前には出立しよう。

8月4日、4時50分小雨、キレット小屋発、鹿島槍北峰を目指す。雨はすぐにも上がりそうだが、雨具を着用した。小屋からすぐに鎖場、濡れた鎖はやっかいだ、とはいえ鎖場は短い。鎖場を抜けてカッパを脱ぐ、汗でむれるより小雨にあたる方が気持ちいい。吊り尾根のコルから鹿嶋槍北峰に、山頂独り占め雨も上がった、雲海の彼方に富士山と槍の穂先が浮かんでいる。吊り尾根のコルに下り返し南峰に、冷池山荘からの先客がすでに3人。剱を眺めながらの朝ご飯、弁当の包みを開けてちょっと驚く。なんと、うな重だ、しかもウインナーつき、これは凄い。弁当を食べているわずかな時間に、続々と山頂に人が上がってくる。冷池山荘を早朝に出発した人たちだろう。冷池山荘に下りビール。赤岩尾根分岐から爺ガ岳へ。昨日の八方キレットに比べると鹿島槍から爺ガ岳のルートは高速道路みたいなものだ。朝の雨が嘘のような晴天、穂高から剱までの北アルプスを一望、遠く八ヶ岳・富士山・南アルプスを望む爺ガ岳南峰のパノラマを目に焼きつけ種池山荘に。山荘前のベンチでのんびり生ビール。単調な柏原新道を黙々と下る。扇沢ステーションが低く目に映るにつれ、下界の事が頭をよぎり始める。まぁ、下界が嫌になったらまた登だけのことだ。次は不帰ノ険越えをしてみよう。
写真 上 五竜岳と八方キレット 中 キレット小屋から剱、毛勝三山
下 鹿島槍北峰から南峰を望む