御金明神参拝 編
今日の目標は御金明神参拝とクラシ北尾根からのイブネ登頂。砂防学習ゾーン手前の空き地に車を置き、中峠から大瀞へ。橋から真下を覗くと今日は水量が豊富で淵が濃い碧色をしている。そういえば曙滝もいつになく立派だった。ヒロ沢方面に20分ほど下ると御金明神への方向を記した小さなプレートを発見。取付きを通り越さずにひと安心。沢沿いのテープに導かれ岩のゴロつく細流をつめる。岩崖の下に出たところで右の斜面を這い上がり小さな尾根を乗越し反対側の斜面を下る。あたりを見回しても御金明神らしき大岩は見あたらない。乗越した尾根に戻り岩崖の下部に沿って山腹を少し下ると小さな鳥居の祀られた大岩にたどりついた。立て札もある。ここが御金明神?いや、違うな。人の顔をしていない。立て札には、このあたりはお金の森とあがめられる神域と記されているから、御金明神はこの近くにあるはずだ。大岩の下の谷へ下ったり、引き返して尾根を登り返したり、大岩周辺の山腹を30分以上歩き回ったが御金明神らしき大岩は見つからない。神域なだけに、不信心者が御金明神に近づかぬよう結界が張られているのかもしれないな。今日は参拝を諦めることにしよう。下の谷から立て札の場所まで戻り振返ると笑いがこみ上げてきた。よくみると大岩の上部が立派な人の顔をしている。最初にたどり着いたこの大岩こそ御金明神だったのだ。後頭部の形だけで違う大岩だと思い込んでしまっていた。手を合わせて拝礼。満面に日光を受け東方を見据える姿が何とも神々しい。参拝記念にビールで乾杯。乗越しに戻り、15分ほど尾根南側の山腹をたどりお金峠に。
この峠から途中ワサビ峠を経て、ひたすら尾根を南に向かえばクラシ、イブネにたどり着くはずだ。クラシ、イブネに向かう前にお金峠から北の小ピークに登り塔ノ峰方面を偵察。ピークの岩塊から北の方角を見渡してみたが枝が張り出していてよく見えない。お金峠に戻り尾根づたいにワサビ峠をめざす。風は強いが雲もほとんどなく最高の天気だ。尾根道は快適で、振返るとすでに落葉した樹林の間から釈迦の特異な山容に目が引かれる。気持ちの良い稜線歩きに心が弾む。作ノ峰を越し岩場を登り切ると360度展望の開けたピークに出た。北を眺めると霊仙あたりまでくっきり。琵琶湖もかすかに見える。本当に今日はいい天気だ。高岩のピークを下ると落葉の敷きつめられた窪地の広場に出た。広場の両脇はちょっとした二重稜線になっていて雰囲気がとてもいい。ゆっくりしたい場所だが今日の行程は時間が読めないためそうもいかない。高岩から山腹を西にトラバースぎみに下りワサビ峠に。峠越しに青空が広がっている。
写真 上 御金明神
下 高岩南の窪地
クラシ北尾根悪戦苦闘 編
ワサビ峠がクラシ北尾根の取付きになるはずだが峠から直接尾根に向かう踏み跡はない。峠から東に回り込み急斜面から北尾根の稜線に這い登る。稜線は予想以上の岩稜の痩せ尾根だ。一気に気が引き締められる。ここから先は景色なんかに見とれていると危ういことになりそうだ。と思っているとガサガサと音がして前方の斜面を石が転げ落ちていった。よく見るとウリ坊が2匹、地面に顔を突っ込みお尻をプリプリしている。木の根でも掘り返しているのだろうか、とてもユーモラスで可愛い。と、突然、2匹とも物凄い勢いで落葉を蹴散らし斜面を駆け上がっていった。足の回転が凄まじい。何と彼等のすぐそばを立派な角を生やした牡鹿が走り抜けていった。一瞬の何とも不思議な光景だった。あー今日は何となくいろんなことが起きそうな気がするなぁ。北尾根の稜線は所々カヤトやシャクナゲが根を張り出していて歩きにくい。切れ落ちた所は木の根を掴みながら山腹を巻く。
あと少しで1110m峰のピークというところで、ひどく風化した岩稜に阻まれ行詰まった。右はスッパリと切れ落ちた断崖。左は急斜面の谷でトラバースして巻くにしても、かなりのギャンブルになる。鞍部までまで戻り長考。左の谷の源頭を慎重にトラバースしよう。取付きに戻りトラバースを試みたがやっぱり恐くて無理だ。再び鞍部に引き返す。しかたない、この鞍部から右の断崖の下まで降り反対側に回り込んで南側の鞍部に登り返そう。とは言うものの鞍部からの斜
面も急勾配。上谷尻谷の何と深いことか。木の幹にぶら下がりながらトラバース。と、頭にガツンと衝撃。はずみで4、5mずり落ちた。掴んだ木の根元が腐っていて倒木に脳天チョップを喰らったみたいだ。クッション付きの帽子をかぶっていて助かった。でも頭が痛い。反対側に回り込んでみると南側の鞍部には急峻な谷が突き上げているうえ、上部は濡れた岩壁でとても直登できない。泣きたい気分。ジグザグを切りながら、谷の勾配が緩むところまで降り南の鞍部から西に張り出した支尾根に取付く。泥壁に手を突っ込みながら木の根を探り支尾根に這い上がる。この支尾根も急勾配の難儀な痩せ尾根だが、ここまでくれば一安心。悪戦苦闘の末、1110m峰南の鞍部に到達。時計を見ると12時1分前。何とこのピークを巻くのに1時間近くも悪戦苦闘してたみたいだ。やれやれ。南の鞍部からたったの6、7分で1110m峰のピークに。ピークは人ひとりが立てるほどの狭さで、西側はカミソリで削いだように切立っていてものすごい高度感にさらされる。何とも言えない快感。それにしても何と鈴鹿の奥深いことか。目の前に今まで知らずにいた鈴鹿の風景が広がっている。眼下に包み込むように深く落ち込んでいく上谷尻谷。銚子ガ口からイブネに続く山並。北に連なる峰々。ずーっとこの景色を眺めていたい。でも風が強くて飛ばされそう。イブネはまだ先だ、急ごう。取り合えず、この1110m峰は「猫返ノ峰」と命名しておこう。(1110m峰はすでに、先人により「鈴鹿のジャンダルム」と謳われていた。)
写真 上 ウリ坊が2匹 下 クラシ北尾根
イブネリラクゼーション 編
1110m峰からはイヌシデが密生した尾根道となり、幹をくぐり根元を跨ぎながらう、ねうねと相変わらずの痩せ尾根を登り続ける。尾根は、ようやく踏み跡のある樹林帯に変わり突然、笹が海の様に広がる大平原に飛び出した。ああ、何って気持ちのいい風景なんだろう。思わず深呼吸。ここがクラシ?クラシにしておこう。何ったって北尾根の付根なんだからクラシに決まっている。一面の笹原の中、鎌尾根を左に眺めながらイブネへ向かう。最高に気持ちがいい。マイナスイオンがどんどん体内に入り込んでくる感じ。ところでイブネの山頂って何処?まったりした笹原でどこがピークだかよくわからない。「イブネ」の標識発見。ここがピークか?「こんにちわ」3人グループが休憩している。それにしてもいい見晴らしだ。木曽川、伊勢湾、知多半島まで見渡せる。景色に見とれていると女性が近づいてきた。「クラシからですか?」「あー、えーと、ワサビ峠から」「どちらから」「名古屋から」 ・・・・・。JRのツインタワーを教えてあげたら、すごく喜んでもらえて僕も嬉しくなる。笹原の中に寝っ転がる。青空しか見えない。なんだか癒されていく感じ。ビールを飲んで帰路につく。佐目峠を過ぎ甲津畑と杉峠の分岐に。このあたりをアゲンギョと言うらしい。変な名前だけど雰囲気はとてもいい。12時50分、杉峠。ここまでくれば後は知った道だ。もう少しイブネでゆっくりしてればよかった。
コクイ谷出合でビールを飲みながら紅葉を楽しんでいると、一度追い抜いた男女のペアが追いついてきた。女の子が河原で滑って、仰向けにひっくり返った。彼氏がすかさず駆寄る。愛は強し。「ここは何処ですか?」と女の子。「コクイ谷の出合」と僕。「コクイ谷の出合って何処ですか?」と女の子。「 ・・・・・。」と僕。彼等は絵地図を頼りにコクイ谷から沢谷峠に出て武平峠に戻るつもりでいるらしい。「迷いやすい道だから次の上水晶谷から国見峠に出た方がいいよ。陽が暮れたら大変だから。」と言っても、彼等はどうしても最短コースで武平峠に帰りたいみたいだ。コンパスも無しで、絵地図だけでも何とかなると思っているみたいだ。1年前までの僕と同じで親近感がわいてくる。あっ、そうだコクイの幽霊の話しをしてあげよう。きっと怖がって考え直すだろうなぁ。と思っているとベテランぽっい熟年夫婦のペアが通りかかった。何処までか訊ねると武平峠とのこと。女の子が奇跡的な偶然と大喜びしている。若者ペアと熟年御夫婦の即席パーティーを見送り、上水晶谷からタケ谷のバイパス道に入る。途中、30人の大パーティーを追い抜き、杉の大木に挨拶して根の平峠に。伊勢谷道を下り砂防ゾーンの駐車地にたどり着くと4時より前だった。帰り支度をしていると変なおじさんがきて、別荘の所有者と山小屋のお客以外車はこの道に入るなと叱られた。迷惑にならない所に止めていたつもりだが、この林道が私道だったとは知らなかった。まぁ、この変なおじさんはともかく、御金明神に参拝もできたし、北尾根からイブネにも登れたし、ウリ坊や牡鹿にも会えたしで超大満足の山行だった。なおコクイの幽霊話しは西尾本第4巻に神崎川一帯のミステリーとして掲載されています。
写真 上 イブネから御在所、鎌ガ岳 下 コクイ谷出合の終わりかけの紅葉
HOME 2001 鈴鹿北部 鈴鹿中部 鈴鹿南部 鈴鹿以外