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 2001年2月11、12日 西穂高岳 2907m             同行8名  

     

 2月11日 吹雪

        

 新穂高 − 西穂高口 − 西穂山荘 吹雪

         

  6:30     起床

  7:45     ロープウェイ新穂高温泉駅

  9:15     西穂高口

 10:45     西穂山荘着

 12:30     雪上訓練

   〜 15:00

 18:00     夕食

 20:00     就寝

     

           

 10日20:45、新幹線羽島駅、寝袋、マットを持参して、ガイドのMさん(52)のワゴンに便乗。同乗者はMさん夫婦、横浜のSさん夫婦(30前後)、奈良のYさん (女性50前半)の6人。00:30、新穂高温泉バスターミナル着。車中泊、Mさん夫婦は外でテント泊。シェラフで寝るのは今夜が初めて。4人が頭と足を交互にして横になる。外の寒気で車の窓がすぐに氷結、でもシェラフは思った以上に暖かい。11日6:30、起床。くもり。バスターミナルのトイレ洗面所で身支度。ここのトイレは清潔で床暖房までされている。そのうえ洗面所はお湯まで出て快適だ。現地集合組みのOさん夫婦(50後半)、広島のWさん(男性43)が合流、男女混成9人パーティーに。8時20分、新穂高温泉駅、始発ロープウェイに乗車。くもりのせいか展望が悪い。9:15、西穂高口。アイゼン装着。トレールに沿って西穂山荘に向かう。厚い雪におおわれた針葉樹の林が美しい。ブロック組みの避難小屋の屋根には2m以上の雪が積もっている。1時間ほど行くと雪が降り始めた。西穂高岳からのびる稜線の鞍部に出ると、急に強風が吹きつけてきた。10:45、西穂山荘着。山荘前の広場には5、6幕のテントが張られている。風が強すぎると言うことで、今日は山頂登はんは諦めることに。山荘に入ると左耳がダンボになったおばさんと左顔面が赤く腫れあがったおじさんがいた。二人とも午前中に独標まで行って凍傷にやられたそうだ。

          

 部屋に入り休息、各自持参の行動食で昼食をとり、午後から山荘周辺で雪上訓練。山荘の外に出ると風はさらに強まっていて地吹雪状態。ピッケルで支えていないと立っていられない。とにかく寒い。手がかじかんでアイゼンの装着に手間取る。目出し帽に高所帽、さらにウェアのフードで頭と顔を覆っていても、風が当たると頬がちぎれそうに痛い。アンダー、フリース、オーバーグローブと手袋は三枚重ねにしてるのに5分もたたないうちに指先が冷えて痺れてくる。ピッケルワーク、耐風姿勢、雪屁の乗越し ・・・・ 、寒さと吹雪に耐えなが訓練を続ける。鼻水が凍る。額と頬が痛い。眼鏡が氷結して視界が効かない。声が聞こえない。顔を上げるとたちまち細かい氷の粒が突き刺さってくる。・・・・・ これが雪山なのか。鈴鹿とは寒さが違う。訓練の後、夕食まで酒盛り。雪山の経験話で盛り上がる。Oさん夫婦は、アイガー、マッターホルンの経験者。Sさん夫婦は、3回目の西穂高、過去2回は独標までで敗退。明日は絶対頂上まで、と志気が高い。Yさんはスクールの常連。Wさんもあちこち雪山ツアーに参加してるそうだ。初心者は僕だけ。僕を除けば、なかなか経験豊富なメンバーだ。5時頃、6、7人のパーティーが山荘に。最後のロープウェイで上がったきたそうだ。ロープウェイは強風で3時前には運休になったらしい。明日の天気が心配だ。18:00、夕食。300人収容の山荘だけあって、食堂は広くて清潔。お茶、ご飯、味噌汁はおかわり自由。ただしテルモスのお湯は500cc300円。冬でも水は貴重らしく洗面所も閉鎖されている。夕食のあと荷物を整理して8時前に布団に入る。と、同時に隣のWさんが豪快にいびきをかきはじめる。なんて寝つきのいい人だ。耳せん忘れた。しかたないので睡眠薬を飲む。高所での睡眠薬は厳禁らしいだけど、まぁ、しかたないか。明日は絶対に西穂の頂上に立つぞ。おやすみなさい。

     

 2月12日 強風くもり

 西穂山荘 − 独標 − 西穂高岳 − 西穂山荘 −西穂高口 − 新穂高 温泉

         

  5:30     起床

  6:00     朝食

  6:45     西穂山荘

  時間不明     独標

 10:56     西穂高岳

 〜 11:00

 13:05     西穂山荘

 〜 13:50

 15:10     西穂高口

 15:30     ロープウェイ新穂高温泉駅

 15:45     新穂高温泉バスターミナル

 16:10     平湯温泉 入浴

 〜 17:15

 20:55     岐阜羽島駅

    

     

 5:30、起床。Wさんがさっそく外の様子を偵察に。「雪はやんで、風も弱い。上の方は晴れてるみたい。テントの連中はもう出発し始めてるよ」。天気は回復しだしたということか。6:00、朝食。食堂の人数を数える。12、3パーティー、70人くらいか。食事を済ませ身支度を整える。手袋はアンダーを1枚増やして4枚重ねに、両手首に厚手のサポーター、首にも手ぬぐいを巻きつけ、昨日以上に防寒対策を厳重にする。ザックには食料、ヘッドランプ、ツエルト、セーターだけを入れ、後の荷物は山荘にデポ。6:35、山荘前の広場に集合。薄曇りだが視界は良好。風も弱い。よし、行けそうだ。装備をチェックしザイルを組む。6:45、出発。先頭はMさん、最後尾はMさんの奥さんで僕は6番目だ。山荘を後にして、稜線への斜面に出るといきなり強風が吹きつけてきた。稜線が近づくにつれ風は強まり、時折耐風姿勢のまま停止。吹き上げる雪が眼鏡に氷結し足元しか見えない。鼻水が止まらないうえ、顔を覆う目出し帽とフードで息が苦しい。稜線に出ると風がさらに強くなり停滞する頻度が多くなる。だんだん体が冷え切ってくる。先行したパーティーが次々引返してくる。独標で止めたのだろうか。一旦、長野県側の緩斜面に待避して小休止。嘘のように風が無い。眼鏡を諦めてポケットにしまう。それでも景色はすばらしい。中央アルプス、南アルプス、富士山までもぼんやり見える。Mさんが一人一人の状態をチェックし、すぐに出発。独標の急崖に取りつく。最初の難関だ。ピッケルを肩からザックと背中の間に挟み込み、両手で確実にホールドしながら慎重に詰めていく。

         

 時間不明、独標。突然目の前に開けた風景に強風も寒さも忘れて息を呑む。峻険な岩稜が、幾重にもピークを連ね天空を圧倒的する。足がすくみ目が眩む。来てよかった。絶対、西穂高に立つぞ。すでに独標には何パーティーかがいたが、ひとしきり景色を楽しむと次々に下山していく。そんな中、1パーティーだけが西穂に向かっていった。増井さんが全員を一カ所に集める。「Oさんの奥さんとYさんは僕の女房と一緒に山荘まで戻って下さい」。「あとの人は行ける所まで行きましょう。風は行動限界の風速20mくらい。これ以上強くなったら引返します」。さすがリーダー、前進あるのみ。「今のうちに何か食べておいてください」。ナッツ入りのチョコバーをかじっると歯が折れそうになった。カチカチに凍っている。あんパンを取り出すと、袋の中でパンが真っ白な霜降りに。やれやれ、あつあつのラーメンが食べたいな。ところで今は何時なんだ。完全防備で時計が見られない。食べたらすぐ出発。ここからが本当の雪山登山だ。西穂高岳までにはピークをいくつも越えなければならない。険しいアップダウンをこなしがら、なんとかピラミッドピークに取りつく。まるで巨大な壁だ。Sさんの奥さんとWさんの足がしばしば止まる。かなり苦しそうだ。ピークにたどりつくと何人か座り込んでしまった。寒さと強風で、だいぶ消耗してるみたいだ。誰もしゃべらない。西穂まではまだまだピークは続く。風は弱まりつつあるものの、そろそろ限界か。「西穂はどれですか」。Mさんにたずねる。話をする時は大声で、顔を寄せ合う。「あのピークです」。指先を追う、まだ遠い ・・・ 。「行けますよね」。「行けるとこまでいきましょう」。座り込んでいた人達も立ち上がった。皆、気力はまだ十分だ。忠実に稜線をたどりながら、きついアップダウンを繰り返す。直接ピークを越えられない時は岩壁をトラバースするが、ものすごい高度感にさらされる。すぐ後ろのWさんのペースが落ちはじめ、僕のザイルに負荷がかかる。おもりを引きずっているみたいだ。こちらも、ぜーぜーと息が上がりはじめる。独標からの中間点あたりでWさんが止った。「ついていけません。ここで待ちます」。「こんなところで待機なんかしたら、凍死します。あと少し、頑張ってください」。ここまでくるとリーダーも厳しい。でも、「あと少し」が本当に長いのが山なんだよなぁ。幸い、風はだんだん弱くなってきている。なんとか行けるだろう。いや、絶対行くぞ。行動再開。が、今度は2番目のSさんの奥さんがしばしば立ち止まるようになった。かなり苦しそうだ。でも、そのおかげで僕は後の負荷が軽くなって楽になった。パーティーでザイルを組んで、ペースをあわせるというのは大変なことだ。普段、単独行の僕にとっては、これもいい経験ということか。「この上が、西穂の山頂です」。やっと西穂の取りつきだ。しかし、ここが最大の難関。急崖で足場が悪い。慎重にホールドしながら一人づつゆっくりと登る。落ちたら奈落の底。息が詰まる。

         

 10:56、西穂高岳山頂。ここが西穂の頂上か。やったと言うより、やっとという感じ。入れ替わりに先行のパーティーが下山を始める。振り返ると焼岳がずいぶん低くに見える。白く均整のとれた笠ガ岳がひときわ美しい。足元からは、峻険な稜線が奥穂、北穂へとつづき、黒い異形をした槍の穂先も、小さいがはっきりと見える。南には中央アルプス、南アルプス、かすかに富士山までも遠望できる。目を落とすと、上高地と梓川が時間の無い世界みたいに小さく、静かに見える。夏に上高地から穂高を見上げた時、別世界を望むような思いがした。今、上高地が異空の地に見える。夢の中にいるのだろうか。全員と握手して記念写真。すぐに下山だ。達成感のせいか、下山となると急に皆元気になる。頂上直下の急崖をピッケルを突き立てながら慎重に降りる。後は全員、高速下山モードだ。誰も遅れない。すぐに先行パーティーを追い越す。ピラミッドピークでも立ち止まらない。最後の難所、独標の壁を降りたところでをザイルを解く。なんという開放感だ。心も体も急に軽くなった。ここからは各自勝手に西穂山荘を目指す。気がつくと僕がが先頭になっている。稜線の陰に入ると風は止んだ。13:05、西穂山荘帰着。カップヌードルがうまい。13:50、アイゼンなしで西穂高口に向かう。トレールを尻セードで滑り降りる。雪上スライダー気分で結構はしゃげる。15:10、西穂高口。ロープウェイ乗車。窓から鋭鋒を連ねた穂高連峰が見える。独票、ピラミッドピーク、西穂高 ・・・・・・ 。あんなところを登ったのか。でも、まだ先がある。ジャンダルム、奥穂高、北穂、・・・・そして槍。15:45、新穂高温泉バスターミナル。無事下山。平湯温泉に寄り道。20:55、羽島駅。Sさん、最後までありがとう。北アルプス冬山デビュー戦、ちょっと厳しかったけど、感動いっぱいで大満足。冬山を一度経験すると止められないって聞いてたけど、本当かもしれない。もっと経験積んでもっと厳しい雪山に挑戦できたらいいな。それにしても、この山行記録、ちょっと長すぎたかも。おわり。

  

  

写真  上  西穂高口から穂高連峰を望む 中  独標から  下  西穂高岳山頂

  

   

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