一人で山に行く理由

  

   

 僕の山行きは、たいていの場合一人。一人が好きとか、ストイックなのがいいとか、加藤文太郎に憧れてるとか、実は自閉症なんですとか、特に理由があるわけではない。ただ、一緒に山に行く友だちがいない。ただ、それだけが理由だった。初めて山に連れていってくれた師匠は、暑いのはいや、寒いのはいや、薮漕ぎはいやとかで、なかなかつき合ってくれない。誰かを誘ってみても「何で、えらい思いして山に登らないかんのだよ。」と断られる。そんな訳で、一人で山に行くことになる。師匠はつき合ってくれないかわりに、アドバイスだけは、しっかりしてくれる。「一人で山に行ってはいけません」。ケガでもしたらどうするの、道に迷ったら下りられなくなっちゃうよ、遭難すると捜索費大変なんだから・・・・。その通りだと僕も思う。

 苦しい山行きの最中、突然「何で自分はこんな所にひとりでいるんだろう」と思う瞬間がある。立ち止まって周りを見渡しても、山は何も答えてくれない。山に抱かれた自分が、ただそこにいるだけだ。山に抱かれている。こんなナチュラルな感覚は、ひとりでないと味わえない。誰にも干渉されない自分だけの時間と空間。平日、ひとりっきりの鈴鹿の山の頂から、遥かJRのツインタワーを見下ろし、「皆さんお仕事頑張ってるかい」、そう心の中で呟きながらビールをグビグビやると結構うまかったりする。まぁ、こんな性格だから誰もつき合ってくれないのかもしれない。それでも、山友だちの一人や二人ほしいというのが本音だったりする。

  

   

  

01.06.25

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